血柘榴 2

第一部 
シォンが遠い国へ嫁に行くとナオンから聞いた。
そして、シォンからも直接聞いた
「母様の役に立てるし私は優秀だからきっと必ず幸せになるわ、それにダメな愚弟に会わなくて済む」 と
シォンは知らないんだ。
あの男の素顔が酷く傲慢で自分の利得にしか興味が無いということを。夜な夜な怪しげに笑ってる事も
嗚呼、シォンはきっと男に愛されているんだと勘違いしてるんだろうな…可哀想なシォン、哀れな姉さん
最後の夜に、僕はかすかに笑った
なぜ笑ってしまうのかは分からなかった、でも胸の奥から笑いがこみ上げてくるのを抑えられなくて、自分でも不思議だった

姉さんが家を出てから数ヶ月、国はますます戦いに明け暮れていた、話を聞けば生物兵器が作られたらしくて、それをいいことになんの関係もない国も巻き込んでるらしい、そこに父様も居ると、生きては帰れないかもしれないわね、と口々に話していた、戦争では人が物凄く死ぬ、血?を流して倒れていくらしい、僕にはまだ分からない、血を出したことないし、ナオンが時々転んで鼻から赤いものを垂らしていてシォンがすごく心配してたのを思い出した、痛い?のかなぁ……?

今朝家の家畜達が病気になったと少なくなったお手伝いさん達が言っていた
家にいた牛や豚がみんな死んでしまったと、それを聞いた母様は青筋を浮かべて喚いていて、ナオンがその怒鳴り声に怖がりながら僕のところに来た
「可哀想なナオン、大人たちは理不尽なんだよ」
「お兄ちゃん?」

「ナオンは僕をひとりにしないでね」

「うん!もちろんだよ!お兄ちゃん!」
優しく笑うナオンはやっぱり優しい
僕の家族と言えるのはきっとナオンだけなんだろうな、ナオンだけは何があっても守らなきゃ…だって僕は兄だもんな。
「最近静かだねお兄ちゃん」
「そうだね、ナオン、みんな忙しいんだろうね」
ここ最近家にいる人が減った気がする
隣国で戦争が起きたらしい、この国はその国に挟まれているしそこそこ小さな国だから巻き込まれてしまってるとお手伝いさん達の噂を聞いた
なんだか最近母様たちの機嫌が悪くて、最近ますます怒られることが増えた気がする、僕には難しいことはよくわからないけど、きっとすごく大変なことなんだろうなって、ナオンと時々話すんだ。
父様が兵として駆り出されてから母様はすごく怖い、いつも不機嫌で、あれがないこれがないってブツブツ言ってる、
僕はお腹がすいててあんまり動けなくなってきたけど、そんなことを言ったらきっとものすごく怒られる、母様は僕をだらしのない子だと怒るかもしれない、ナオンに八つ当たりをするかもしれない。
それはやだ
だから、僕はこっそり裏の森へ行く、窓から降りれば誰にも見つからない。これはナオンにも内緒だ。
この森は魔女の森と呼ばれていて、人が寄り付くことは無いしかと言って僕は魔女に出くわしたことがなかった、だから、きっと魔女なんて居ないなぜみんな怖がるんだろう。いないものを怖がるだなんて、この世界はきっと見えるものが全てだと言うのに、愛も恋もきっと迷信だ、父上が言うように、僕は要らない子、なぜ女の子に産まれられなかったのだろう…
森の木の実や小さなきのこ達は僕の言葉を聞きながら静かにそこに生えている、文句も罵倒も無い。
千切って齧っても…まぁ…それが当たり前なんだろうけど…
お腹がいっぱいになるまでキノコや木の実を探し食べ歩く、なるべく早く帰らないと母様が心配する、ナオンに八つ当たりするかもしれないから。
この世界が争いを始めた頃から大人たちの酷く歪んだ考えを知った、
大人たち、母様や父上が夜に話していた事も知ってる
僕の目が酷く忌み嫌われる色だということ、母様が僕を愛してないこと、知りたくない事だって沢山あったけど、もう僕だって幼い訳では無いんだ、嫌でも知ることになる、昔のように純粋な気持ちで親を見ることが出来ない。父様は僕を鍛えようとしていたんだろうけど……どうしても剣を持つのが嫌だった、あれは人を殺めるものだ、父様の手から臭う鉄臭い匂いがソレを物語っている。

それに、父様は母様に隠れて、夜中に人を自室に連れ込んでるのを見た、何をしてるかは分からなかったけど、悲鳴みたいな声が時々聞こえてきてすごく怖かったのを覚えてる

なんだったんだろう……

KOO

Twitterに上げた絵や、ネタ等。 創作小説や二次小説 日常を上げます。 たまにR18ネタものを書く。 コメント等が貰えると泣いて喜ぶ。 不定期更新

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